【劇場アニメ】絶望の怪物【感想】

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DATA

  • タイトル:絶望の怪物
  • 公開年:2019年
  • 時間:30分
  • 制作:コタニジュンヤ
  • 監督:コタニジュンヤ
  • 脚本:コタニジュンヤ
5.5 out of 10 stars (5.5 / 10)

ある日、中学生の星野葵は自分と家族が醜い宇宙人の怪物だと知る。
彼女と弟の雄太はそのことを知らないまま育った。
両親がずっと隠していたから。
怪物はおぞましい姿をしている。彼らは薬を使って人間の姿に化けていた。
その薬がなぜか葵にだけゆっくりと効か なくなっていく……

公式サイトより抜粋

概要

本作は2019年、漫画家でもあるコタニジュンヤ監督が個人制作した劇場アニメです。
普通の女子学生と思われた主人公とその一家に起こる悲劇を描いています。
翌20年には第23回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門の審査委員会推薦作品となり、第74回毎日映画コンクールアニメーション映画賞・大藤信郎賞にノミネートされています。

少女の身に起きた異変

本作の主人公は女子中学生「星野 葵」です。
彼女は両親、弟との4人家族で暮らす普通の女子に見えます。
ある晩葵はTV番組の録画予約を巡って母親と喧嘩をしてしまいます。母親に悪気は無いものの、依頼していた録画予約を失敗してしまっていて、機嫌を損ねた葵は夜、朝と食事を抜いてしまいます。
翌日葵は学校で録画失敗した番組を見損ねた事を友人にこぼしたりしますが、2食も抜いた事が災いしてか体育の授業中に倒れてしまいます。
その後葵を保健室まで運んだり、食事を買ってきたりしていた、クラスメートの「大宮 圭吾」から件の番組を録画していたので見に来ないかと誘われます。
そうして圭吾の自室で番組鑑賞した葵ですが、話の流れで圭吾に告白されます。
その時見計らったかの様なタイミングで宅配便がやって来たため圭吾は席を外しますが、葵は動揺してしまいます。
本来なら圭吾が離席している間に冷静になって返答を考えたい所でしょうが、突如葵は右腕に異変が生じます。その腕は白く節くれ立った物で異常であることは確かと言えます。
そのため葵は文字通り逃げるように帰宅するのでした。

公式サイトより抜粋

突如一変した日常

それから自宅にて葵の異変を見て取った母は謎の機械で葵の首筋に薬を打つと右腕の異変は収まります。この事から葵の身に起こった異変について両親は知っている事になります。
そうして帰宅した父親から、星野家は地球外からやって来た異星人である事や乗り物が墜落したため、『コフ』と呼ばれる薬剤を打つ事で地球人に成りすまして生きてきたと知らされたのでした。
そしてこのコフは定期的に打っていた様ですが、葵はその効果が短くなっている様です。耐性が付いてしまったのでは無いかと父親は推測しますが、後で弟も不意に効果が切れた様な描写があったため、若いと耐性が付きやすいのかも知れません。
こうしてごく普通と思っていた少女は地球外知的生命体だと知らされ、しかもコフの効果がいつ切れるか分からない事から学校にも通えなくなるのでした。

作画、雰囲気など

本作は漫画家を本業としているコタニ氏の個人制作作品と言う事もあってか、作画はお世辞にも良いとは言い難いものになっています。本業を考えると絵を書くこと自体は得意と思われますが、動かすとなると労力からして段違いですし、技術的に勝手が違うのかも知れません。
そして序盤以降はひたすら重苦しい雰囲気の展開となっています。
また圭吾が時折話題に出す、海外の映像に映っている異形の存在は星野家の同胞では無いかとも思われるなど世界観には拘っている印象を受けます。

破局へ向かう物語

おそらく病欠という事になって学校へ通えなくなった葵ですが、人目を避けて家に籠もる生活に嫌気が差してくる様です。圭吾が見舞いに来ても万一を考えると顔を合わせる事は出来ません。
また葵はこのままの生活が続けばコフが底をついて、争奪戦が起こってしまうのでは無いかといった恐れを抱く一方で、家籠もり生活に疲れてか、深夜にコフを打って散歩するなど複雑な心境が垣間見えます。
そして母に危険だと咎められては口論になるといった生活が続いていた中、打開策を求めて協力者の元へ向かっていた父親が帰宅します。
しかしこれは終わりの始まりでした。

まとめ

本作は序盤以降、とにかく重苦しい展開で救いの無い結末に至ります。
そしてアニメとして見ると個人制作故の作画に加えて、全員が素人と思われる声優陣でやや残念な事になってしまいます。個人制作としては優れている部類でも、商業ベースに乗せられるかギリギリのラインといった所でしょううか。
ただストーリーは救われないながらも鑑賞に耐えうるものでしたし、ED曲の作詞もコタニ氏が行っているなど雰囲気には拘っていると感じられました。
いわゆる鬱アニメが好きな方であれば、アニメとしての出来映えに少々目を瞑れば視聴する価値はあるかも知れません。